ブドウ園/担い手に“立候補”  イタリアンレストランのオーナーシェフである坂詰幸雄さん(54)、つぐみさん(54)夫妻が今秋、上越市三和区北代のブドウ園でブドウの収穫作業を行った。レストランを営業する傍ら、今後、ブドウの生産に向けて本格的な栽培管理に携わっていく。 ◇  坂詰さん夫妻が営む上越市内のイタリアンレストラン「オステリア サカヅメ」では、自らが栽培した野菜を使用。店ではワインを提供していることもあり「いつか広いブドウ園でブドウを栽培してみたい」と考えていた。  契機となったのは、県農業普及指導センターの職員から「北代のブドウ園で担い手候補を募集している」という話を聞いたことだ。声を掛けてくれた職員は、坂詰さん夫妻の長男が通っていた県農業大学校で講師を務めていた人だった。大きな縁を感じた坂詰さん夫妻は、今年の秋からレストラン営業の合間、同市三和区北代にある西條由展さん(79)の「山の手ぶどう園」に通い始めた。  今回、初めてブドウの収穫を行ったつぐみさんは「普段の畑作業とは違い、見上げる姿勢で作業するのでとても新鮮でした」とにっこり。今後、剪定(せんてい)>作業が控えており、剪定の結果がどのように表れるのか楽しみにしているという。  二人を受け入れた西條さんは「坂詰さん夫妻からは、農作業が好きだという気持ちが伝わってきます」と目を細める。  西條さんはブドウ園を受け継いだ当初、サラリーマン生活と両立していた。坂詰さん夫妻が店を営業しながら通ってきてくれることが自身の姿と重なり、とてもうれしいという。「二人が描く将来像を実現できるよう、私たち農家も協力していかなければなりません」と真剣だ。  坂詰さん夫妻は「現在は『経営者』イコール『栽培者』という構図です。私たちがいわば小作人となることで、経営者の負担を軽減し、ブドウ園の継続につながってほしいです。そして、興味や関心を持っている人と生産現場との懸け橋のような存在になれれば」と力強く話す。 (2017年11月1週号 新潟版) 和牛繁殖/育種価を重視  【阿賀野】「労力面での負担軽減を考え、昨年3月に酪農経営から和牛繁殖経営に完全移行しました」と話すのは、阿賀野市久保の佐藤豊紀さん(64)。  30頭規模の酪農経営をしていたが、受精卵移植による和牛子牛を生産したことがきっかけで、1992年から和牛の繁殖雌牛の飼育を始めた。その後、和牛繁殖経営へ転換し、現在は繁殖雌牛31頭を飼育している。  「和牛繁殖経営は酪農経営と違い、子牛を市場へ出荷した時しか収入が得られないので、資金のやりくりが大変です」と苦労を話す佐藤さん。  牛にストレスを与えないよう、牛舎は採光・通風を良くし、牛床にはもみ殻を自動補充できるパイプを設置するなど、常に清潔な環境を保っている。受胎牛は広い牛房でのびのび飼育され、分娩(ぶんべん)監視カメラで24時間いつでも様子を確認することができる。  育成方法は腹づくりを重視し、大きく育つ素牛(もとうし)を市場へ出荷できるよう、日々力を注ぐ。佐藤さんの飼育技術が認められ、9月に行われた「全国和牛能力共進会」に県の代表として出品した。  「今後は遺伝的な能力である育種価の高い牛を後継牛として残せるように牛の更新を行いたいですね。一年一産を目標に、繁殖成績が向上するよう頑張ります」と意欲を見せる。 (2017年11月1週号 新潟版) さつまいも狩り/今年も盛況  【新発田】新発田市上赤谷で先ごろ、「ふじい農園」が主催する「さつまいも狩り」が行われた。20年以上も前から開催されており、毎年100人以上の参加者が訪れる。  このイベントを目当てに遠方から来る人もおり、およそ6割が毎年参加しているリピーターだ。参加者からは「自然に囲まれて、サツマイモを掘ることはなかなかできない経験です。毎年来たくなります」との声が聞かれた。  イベントの準備は、同農園の藤井健吉さん(80)がほとんど一人で行っているため大変だが、当日は妻と10人ほどのボランティアが協力してくれるので、とても助かっているという。  藤井さんは「さつまいも狩りの他に、サトイモ、トウモロコシの販売や豚汁のサービスなど、皆さんに喜んでもらうことができました。これからも地域活動に力を入れていきたいですね」とほほ笑む。 (2017年11月1週号 新潟版) 食用ギク/挿し芽栽培で色鮮やかに   【見附】「食用ギクはクセがないので、おひたしや酢の物など何にでも合いますね」と話すのは、見附市池之島町の小川敏幸さん(71)。「もってのほか」など食用ギク4品種の栽培・出荷を行っている。  小川さんは約20年前から食用ギクの栽培を始め、7年ほど前に栽培規模を増やした。現在はハウス2棟で栽培しており、最盛期には収穫が追いつかず、人手を増やして作業するほどだ。  「食用ギクは同じ株を使い続けるとだんだんと花が小さくなり、品質の良いものができません。挿し芽栽培にすることで大きく色鮮やかな花にしています」と熱く話す。  育てた食用ギクは、10月から11月半ばまで地元の直売所やスーパーで販売される。 (2017年11月1週号 新潟版) 〈ほっとライフ〉キウイフルーツ/甘さが自慢  ▽今井聡(さとし)さん▽53歳、五泉市中名沢  「ここのキウイフルーツは甘味が強く、とてもおいしいと好評です」と話す今井さん。総合建設業を経営する傍ら農業も営んでおり、水稲5.6f、キウイフルーツ約2fの他、ギンナンやクリなど五泉市村松地域の特産品を中心に栽培している。  同市中名沢地区と隣の橋田地区では、40年ほど前からキウイフルーツの栽培が始まった。その頃は、キウイフルーツがあまり出回っておらず、米の収穫が終わってから収穫ができ、栽培も比較的容易ということで導入された。  当時、今井さんの父親など地区の農家の代表らがニュージーランドへ視察研修に行き、栽培方法などを学んだという。その後、地元農家約80戸で「橋田キウイフルーツ生産組合」を設立。休耕田や山を開墾してキウイフルーツの栽培が始まった。  キウイフルーツは、年間を通して手を掛けるが、その中でも剪定(せんてい)>作業が収量、品質に影響するため、一番重要な作業となる。「経験を積み長年の勘でどの枝を残すと良いのか、少しずつ分かってきました。思った通りにバランス良く枝が伸びたときはうれしいですね」と今井さんは笑顔を見せる。  「農業は手間をかけた分、結果に表れます。大勢の人に喜んでもらえて、やりがいがあるので、今後も継続していくことを目標に頑張りたいです」と熱く話す。 (2017年11月1週号 新潟版) 〈農業に夢を駆ける〉〈30〉栽培面積の拡大に意欲  ▽中村穣(とおる)さん▽27歳▽上越市柿崎区米山寺  「農業は自分の計画次第でさまざまなことに挑戦できるので、やりがいがあります」と話す中村さん。県農業大学校を卒業後、就農し、今年5年目となる若手農家だ。父親と共に水稲と野菜を栽培している。  中村さんは主に野菜を担当しているが、同大学校で専攻していたのは水稲だった。就農時に「これからは、水稲以外の作物にも取り組まなければならない」と考え、野菜の栽培を始めたという。野菜の栽培経験は無かったが、先輩や専門家に選果や出荷の方法、栽培技術を指導してもらい、栽培をスタート。現在は、250平方bのハウス3棟と転作田を利用した畑地45eで、トマトやブロッコリー、エダマメを育てている。  「初めは失敗ばかりで、苦しい思いもたくさんしました。特に土作りは試行錯誤を重ね、ようやく納得のいくものになりましたね」と振り返る中村さん。「病気にかからないようにするため、防除は徹底して行い、水管理やハウスの開閉にも細心の注意を払っています」と力を込める。  就農当初から栽培しているトマトは、育苗で使用したハウスに定植し、10月まで収穫を行っている。病害を防止するため、ローテーションを組んで栽培しており、収穫後は翌年用にブロッコリーを定植するなど計画的だ。  「これまで栽培してきた野菜の品目は変えずに、今後はさらに栽培面積を増やしていきたいですね」と目標を話す。 (2017年11月1週号 新潟版) 〈週間農政共済〉10月20日〜10月26日 ◎台風18号被害を激甚災害に指定  政府は、台風18号に伴う9月15〜19日の暴風雨災害を激甚災害に指定した。被災自治体による農地などの災害復旧事業への国の補助率をかさ上げする。農地などの復旧事業費の査定見込額(18日時点)は全国で68億円で、うち大分県が23億円、愛媛県が11億円。なお、台風18号による農業関係被害額は全国で193億円超に上っている。(10月20日) ◎経済4団体がTPP11の早期実現を要請  経団連など経済4団体は、米国を除く11カ国での環太平洋連携協定(TPP)早期実現を求める要請書を安倍晋三首相に提出した。TPPは「アジア太平洋地域のダイナミズムを取り込む成長戦略の重要な柱」などとし、11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議での大筋合意を目指すよう求める内容となっている。(23日) ◎17年産大豆などの作付面積を公表  農林水産省は、2017年産大豆(乾燥子実)の作付面積が前年産比200f増の15万200fと公表した。田は500f増の12万800fで、畑は400f減の2万9400f。小豆は、主産地の北海道でインゲンからの転換などが進んだため、7%増の2万2700fだった。インゲンは16%減の7150f。(24日) ◎「むらの宝」に31地区の優良事例を新たに選定  内閣官房と農林水産省は、「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」として新たに31地区の優良事例を選定した。農山漁村が持つポテンシャルを引き出すことで、地域活性化や所得向上に取り組んでいる優良事例を選定し、全国に発信するのが狙い。今回選定されたのは、長野県生坂村の公益財団法人生坂村農業公社や熊本県阿蘇市のNPO法人ASO田園空間博物館など。11月下旬には、グランプリと特別賞を選定した後、首相官邸で選定証授与式と交流会を開催する。(24日) ◎1等米比率/前年同期比3.1ポイント低い80.8%  農林水産省は、2017年産の水稲うるち玄米の1等比率は9月30日現在、前年同期に比べ3.1ポイント低い80.8%になったと公表した。2等以下への格付け理由は、心白と腹白が31.4%、着色粒(カメムシ類)が25.9%、整粒不足が18.4%、充実度は11.6%だった。(25日) ◎所有者不明の土地が全国に約720万f  増田寛也元総務相ら民間有識者でつくる研究会は2040年時点で所有者が分からない土地が全国で約720万fに達する可能性があるとの推計を発表した。北海道(約780万f、離島を除く)の約9割の広さ。所有者不明の土地が及ぼす経済損失は17〜40年の累計で約6兆円に上ると見積もった。(26日) ◎温暖化で猛烈な台風が日本の南海上で増加も  気象庁気象研究所などは、地球温暖化が進み、21世紀末に地球上の平均気温が3度以上高くなった場合、最大風速が秒速59b以上の猛烈な熱帯低気圧(台風)の数は、日本の南海上からハワイ周辺では高頻度で表れる可能性が高いと発表した。これまでにない多数の気候シミュレーション結果を解析した。地球全体では個々の台風は強化されるが、台風発生数の減少が大きく、猛烈な台風の数は減る。調査結果は将来の防災対策などに役立つとしている。(26日) (2017年11月1週号 ニュース)