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にいがた版 2016年9月4週号

放牧後に野菜を栽培
独自の循環型養豚を実践

須藤 由彦さん 佐渡市

「砂地での放牧は豚飼養の重労働が軽減できるだけでなく、豚がのびのび育つので肉質が良くなります」と笑顔で話す佐渡市佐和田の須藤由彦さん(55)。畑20㌃、果樹10㌃を栽培し、一方で休耕地80㌃を利用しながら、独自の方法で工夫を凝らした養豚を行っている。

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豚舎の横で須藤さん

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飼育している豚「ブリティッシュバークシャー」

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砂地に電気柵を設置して放牧する

須藤さんが養豚を始めたのは今から5年ほど前。廃業する県内の家畜農家から「ブリティッシュバークシャー」という黒豚を譲り受けたのが始まりだった。現在、約150頭を飼養し、80㌔㌘程度にまで成長させ「島黒豚」として出荷している。
国内にも同品種の豚は存在するが、須藤さんは種豚をイギリスから輸入し、小木地区で繁殖させている。その後、10㌃ほどの太陽光発電の電気柵を設けた佐和田の海岸沿いの砂地に放牧。砂に含まれる鉄がアンモニアを硫化鉄に変えるため、排泄(はいせつ)臭が抑えられる他、夏場は砂の温度が80度以上になり殺菌作用で病気の感染を防ぐことができる。
また、飼養するための設備も工夫し、雨風が当たらないよう餌場には小屋を設けた。豚が餌を鼻でつついてから食べる習性を利用して、餌箱には扉を付け、野鳥に食べられないようにしている。餌やりは早朝に1回与えるだけで労力は掛からない。
飼料には佐渡産の米粉を配合するため、肉質が良くなり、肉に甘味が増すという。時期になると、今まで処分していたリンゴやサツマイモなどの規格外品を有効利用し、飲み水には井戸水を使用している。
放牧を行う場所は、草木が生い茂っている休耕地を選んでいる。これは、放牧が終わった跡地に野菜を栽培するためだ。豚が草木を根ごと食べてくれるので耕うん作業が楽になるだけでなく、排泄物が堆肥となり良い土壌になる。野菜の収穫後は、また豚の放牧を行って、収穫くずを豚に食べてもらう。まさに循環型農業だ。
豚はストレスにとても敏感で、放牧は一つの囲いに20頭しか行わないようにしている。なるべく負荷を掛けずに飼養するため、一般の畜舎飼養より1カ月半ほど時間をかけて飼養するという。
年に1回、地下水が汚染していないか地下浸透の検査を必ず行い、環境に対して負担をかけていないかの確認も怠らない。
「課題点はまだまだありますが、四季がはっきりとした佐渡独自の豚飼養を構築できるよう、今後も挑戦していきたいです」と力強く話す。
(逸見旭)

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