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にいがた版 2016年11月1週号

食肉加工施設整備し地域貢献
獣害を地域資源に

青田 徹さん  糸魚川市

「いくら害獣とはいえ、命を粗末にするのは忍びなかったんです」と話す糸魚川市大洞の青田徹さん(55)。自宅倉庫を改装し、イノシシなどの野生動物を解体処理する食肉加工施設を整備。食肉処理業「惣右衛門」(代表=青田葉子さん)として食品営業許可を取得し、加工したイノシシの肉(ジビエ)を市内のレストランなどに提供している。獣害対策と食肉の活用に期待が掛かっている。

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自宅倉庫を改装した食肉加工施設内で青田さん

 

 

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製品にしたイノシシの冷凍肉

糸魚川市では、十数年前からイノシシによる農産物の食害や踏み荒らしが増えており、2015年度に捕獲されたイノシシは466頭にも及ぶ。
青田さんは28年前に銃猟免許を取得し、クレー射撃の全国大会で優勝した経歴を持つベテランだ。建設業の仕事の合間に地元でイノシシやシカ、クマを狩猟している。
これまで捕獲したイノシシは、食肉として処理を行っていたが、手間が掛かり、衛生管理も難しかった。「もっと円滑に処理ができないか」と考えた青田さん。自宅の倉庫を休みの日や夜間を利用し、4カ月かけて加工施設に改装した。
「一部業者に頼みましたが、ほとんど自分でホームセンターから資材を購入し、考えながら楽しんで造りました」と笑顔で話す。国の定めた野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針に基づき、15年12月に食品営業許可を取得。県内でも2カ所目だという。
施設内には、捕獲した動物を吊(つ)るすウインチや真空パックの機械と冷凍庫などが並び、解体から包装まで一連の処理ができる。青田さんは、今年の2月までの狩猟期間中に40頭を捕獲し、同施設で加工処理をした。
「施設の完成で、食肉処理の労力が低減でき、これまで以上に衛生管理に気配りできるようになりました」と話す。
ジビエ料理をもっと身近に親しんでもらおうと、9月に糸魚川市役所と共催で、新潟市の料理人を招き、料理講習会を開催。糸魚川市内の料理人や市民30人ほどが参加した。
「ジビエ料理が安全でおいしいものだと、皆さんに知って食べてもらいたいです」と青田さんは普及に力を入れる。
全国的に狩猟者は、高齢化により減少の一途をたどっている。青田さんは「処理施設が獣害対策や食肉が流通することで、地域の活性化に一役買えれば」と意欲的だ。
(齋藤晃)

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