NEWS & INFORMATION

ニュース

にいがた版 2018年1月4週号

吊し干しで絶品に
おいしさをとことん追求

自家産「新大正糯」の餅 源川 藤郎さん 見附市

「幻のもち米」「もち米の王様」と呼ばれる「新大正糯(もち)」を栽培している見附市石地町の源川藤郎(みながわふじお)さん(70)。水車の動力を用いた杵(きね)つき餅を販売し、好評を得ている。

(1-4)トップ「早川利仁」1
自作の水車と源川さん

(1-4)トップ「早川利仁」2
水車の動力を使って餅をつく

源川さんは12年ほど前、趣味が高じて水車小屋「聴風庵(ちょうふうあん)」を自作した。食事処(どころ)として手打ちそばや自家製おこわ、精進料理を提供する他、切り餅やかた餅、よもぎ大福なども販売している。
店を始めたきっかけは、水車の動力を使って餅をつけないかと考えたことだ。「近隣の地域では、餅は特別な食べ物でした。正月だけでなく、行事のたびに食べられていて、明治期の資料によると、年間50回以上食べられていたそうです」と源川さん。
もち米の栽培を始めるにあたり、60年以上前に父親が栽培していた「大正糯」という品種を栽培しようと決め、探し始めた。大正糯は食味が非常に優れているものの、倒伏しやすく、収量も少ないため、1955年ごろに県内での栽培が激減。その後、「こがねもち」が主流品種となった。
大正糯の入手は非常に難しかったが、それでもその味を忘れられず、たどり着いたのが新大正糯という品種だった。新大正糯は、粘りとコシの強さ、甘い風味が特徴のもち米で、栽培管理が難しく、10㌃当たり7俵ほどしか収穫できない農家泣かせの品種だ。食味の良さと県内ではほとんど市場に出回らないことから「幻のもち米」「もち米の王様」と呼ばれており、源川さんは現在、80㌃ほど栽培している。
水車でついた新大正糯は薄く切り、かた餅を作るため寒中の1カ月間、縄で吊(つ)るして干す。寒干しすることでうま味が増し、色合いも良くなるが、気温の変化でひびが入りやすいため、管理には気が抜けない。商品として販売できた餅が製造した分の半分ほどだった年もあったという。
源川さんは「新大正糯は手間がかかりますが、食材と製法にこだわり、ごまかさずにやることで、お客さんから『おいしい』と喜ばれています」と笑顔で話す。
聴風庵の評判は、口コミやテレビなどの紹介で広まり、リピーターも多い。「全国には、その土地ならではの餅料理が数多くあります。それらを研究し、新大正糯の新しい商品開発に挑戦していきたいですね」と意気込みを見せる。
(早川利仁)

to_top