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丹精込めた新潟のもち(2023年1月1週号)

日本の食料自給率はカロリーベースで38%。食料の多くを輸入しており、食を取り巻くリスクが年々高まっている。そのような状況の中、国民が必要とし、消費する食料は、できるだけ自国で消費する「国消国産」の考えが広まっている。新型コロナウイルス感染症の拡大で外出自粛など内食需要が高まり、保存食として「もち」が見直されているという。今回は自らが栽培したもち米を加工・販売している生産者の取り組みを紹介する。

阿賀の白雪餅 (農)濁川生産組合・新潟市

「高品質な品物を提供していきたい」と大塚さん
4種詰め合わせセット

 新潟市北区の農事組合法人濁川生産組合(代表理事・田村雄太郎さん・37歳)は1989年設立。従業員11人、パート5人で、水稲約76㌶、ブロッコリーなど露地野菜約1㌶、トマトやチンゲンサイなどの施設野菜を栽培するほか、98年からもちの加工販売に取り組んでいる。

 きっかけは、雇用を増やし始めた時に、冬場の仕事と現金収入確保のために新規事業導入を考え、長野県へ凍(し)みもち加工の視察に行ったこと。その際に、当時の代表が「これならばもち加工が可能だ」と思い始めたことだった。

 加工担当の大塚克洋さん(48)は「加工を始めた当初は、もちのパッケージにネーミングはありませんでしたが、当時の新潟市長だった長谷川義明氏から『阿賀の白雪餅』と命名していただき、現在に至っています」と話す。

 11月から12月に同組合が栽培する「こがねもち」を使用し、9千㌔を加工している。「加工している2カ月間は、一日中部屋に閉じこもって作業しているので大変です」と大塚さん。衛生面を一番に、品質の安定に神経を使い作業している。

 商品は白もち、豆もち、ゴマもち、ヨモギもちの4種類。直接販売や直売所、インターネットでも販売しており、近郊には直接配達も行うなど、きめ細かいサービスが好評を得ている。

 「ほかのもちと食べ比べておいしいと声をかけてくれるのがうれしいです」と笑顔の大塚さん。昔ながらの風味が出る「とり粉」を用いて、こがねもち特有のコシを生かし、伸びが良くなるようにつきあがりを調整し仕上げるのが最大の特徴だ。

 「今後は、現在の栽培規模を維持しながら、より高品質なもち米を生産し、喜ばれる商品を提供していきたいですね」と話す。

 ▽問い合わせ先=(農)濁川生産組合(電話025・259・5542、FAX025・259・5543)

炭もち ㈱花の米・上越市

「より多くの方に、花の米のもちを味わってほしいです」と千恵さん
切りもちのセットは種類が豊富

 「知人の家で食べた、杵(きね)と臼でついたもちのおいしさに感動したのが、もち加工に取り組むきっかけになりました」と話す上越市妙油の黒川義治さん(54)。もともと農業経営をしていたが、2012年に農業法人として株式会社花(はな)の米(まい)を設立した。現在は、水稲約40㌶で「コシヒカリ」のほか7品種を栽培する。

 「7~8年前は杵と臼でついたもちを、近所や顧客などにふるまっていました」と話す黒川さん。17年に加工場を造り本格的にもち作りを始め、白もち、炭もち、桜エビもち、豆もち、しそもち、青のりもちを加工販売している。

 中でも炭もちは、焼いたときに外がカリッと、中身はフワフワで、白もちと違う滑らかさがあり、若い人からのリピート率が高いという。また、桜エビもちも、お祝い事の時に喜ばれる人気の商品だ。

 加工は12月から2月までで、娘の松野千恵さん(34)を中心にパートを含め4人で作業している。「衛生面だけでなく、カビ対策が一番大変です。気温が10度以下の時に作業するのが理想です」と話す。

 販売は直接販売のほか、一部店舗やインターネットでも行っている。

 コロナ禍で生活様式の変化や食が見直されている中で「食」をより大切にしているという黒川さん。「農家は消費者に対して商品を売るだけではなく、食の安全・安心を発信していかなければなりません」と話す。経営面では、収入保険に加入し、リスクに備えている。

 「米作りからもちの加工まで、家族が力を合わせた愛情たっぷりのもちです。多くの方に味わってほしいですね」と千恵さんは笑顔で話す。

 ▽問い合わせ先=㈱花の米(電話025・528・7081、FAX025・528・3999、https://hanano-mai.jp

枝豆もち (農)麓二区生産組合・弥彦村

「弥彦特産のエダマメが入った枝豆もちも人気です」と本多さん
白もちなどの商品

 農事組合法人麓二区生産組合は、1971年に任意の水稲生産組合として弥彦村に設立。81年に法人化され、水稲、大豆、イチゴ、ミニトマトを栽培し、もちやみそなどを製造販売している。

 もち製造は75年に始め、同組合で栽培する「こがねもち」を使い年間10㌧を加工している。

 「当時、外に働きに行く人が増え、家でもちをつく人が少なくなったことや、幼稚園などの食育活動でもちつきを依頼されることが多くなり、加工を始めました」と理事の本多雅志さん(55)はきっかけを話す。

 現在は白もち、豆もち、玄米もち、草もち、ごまもち、あわもち、きびもち、枝豆もち、丸もちの9種類を販売する。中でも玄米もちは、腸内環境を良くする食物繊維が豊富で、玄米特有のうまみと甘みが特徴だ。

 また、枝豆もちは弥彦特産のエダマメ「弥彦むすめ」をもちに入れることで、エダマメの風味を楽しめる。豆の変色や風味が落ちるため賞味期限が短いのが難点だが、看板商品で人気が高い。

 「白もちは一番の人気商品ですが、お客さまからは味が濃く、コシがあり歯切れがとても良いと評判です」と話す。

 もち米の品質向上のために、施肥や水管理の徹底を図るだけでなく、加工時の天候や、米の状態を見極めてもちをつくことで、最高の状態に仕上げている。

 「もちの消費量が減少する中で、若い人の消費拡大に向けたアプローチが必要です」と本多さん。販路の拡大が課題だという。販売はJAや一部業者に卸しているほか、直接販売、インターネットでも行っている。

 「多くの方に、もちのおいしさを知ってほしい。今後は、もちをベースにしたお菓子の製造販売も考えています」と将来を見据える。

 ▽問い合わせ先=(農)麓二区生産組合(電話0256・94・4053、FAX0256・94・4501、https://fumoto2.com

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