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農村の魅力が詰まった農家民宿(2024年1月1週号)

宿泊や郷土料理だけでなく、農作業や地域の伝統行事など農村の暮らしを体験できる「農家民宿」。農山村を訪れ、豊かな自然や美しい景観を楽しみ、地域文化を体験するなど、人々と交流するグリーン・ツーリズムへの関心が、若者や都市住民の間で人気だ。県内各地でも農家民宿を営み、新潟の里山の魅力を発信している農家がいる。農家民宿の魅力や特徴ある取り組みなどを紹介する。

おっこの木・小千谷市

幕末に活躍した「山岡鉄舟」書のびょうぶの前で細金さん
築160年の古民家を生かした室内

 「2004年に発生した中越地震後に立ち上げた『わかとち未来会議』が地域再生の始まり」と話す「株式会社Mt.ファームわかとち(小千谷市真人町)」の代表取締役・細金剛さん(71)。震災からの復興と活性化を目的としたわかとち未来会議から、16年に地域産業分野を分割して同社を設立した。

 現在は水稲約10㌶のほかに、スイカやカリフラワーなど野菜を栽培する。「コシヒカリ」は農薬と化学肥料を5割まで減らした特別栽培米を栽培している。

 復興計画の中に廃校になった小学校を利用し、宿泊施設を造る予定だったが、集落内で解体されることになっていた築160年の古民家を買い取り、農家民宿として改修。10年に「おっこの木」として開業した。「山あいにある小さな集落で四季折々の自然を満喫し、のんびりくつろいでほしい」と細金さん。

 建物はケヤキ造りで、16年に国指定文化財に登録された。室内はいろりやかやぶきの天井を見ることができ、趣が感じられる。

 提供する料理は地元のお母さんたちが作っていて、野菜や山菜が中心の飾らない料理。食事の際にはお母さんたちとの会話も弾み「田舎の実家に来たようだ」というファンも増えている。中でも、同社が栽培し提供するご飯が人気で、4杯もおかわりをする宿泊客がいるという。

 また、宿泊客がもっと楽しめるように、母屋に隣接する蔵を改装した「蔵BAR」もオープン。交流を深める場として提供される。

 「これからも魅力あるこの土地を、多くの方にアピールしていきたい。そのためにも地域農業を守っていくことが使命ですね」と細金さんは話す。

 古民家民宿「おっこの木」=電話0258(86)7998

おくやま・関川村

「1日1組限定なので、気兼ねなく宿泊できます」と話す奥山さん夫妻
自家産コシヒカリで仕込んだどぶろく「晴」と「政」

 「『どぶろくを造りたい』『マイクロビオテックを多くの方に知ってもらいたい』という2人の気持ちが、農家民宿を始めたきっかけです」と話す奥山政行さん(67)と妻の晴子さん(63)。奥山さん夫妻は2013年に関川村深沢にある自宅を改装して農家民宿「おくやま」の営業を始めた。

 水稲4㌶のほかに7㌃の畑で野菜やスイカ、メロンを栽培している。水稲4㌶のうち1㌶は農薬や肥料を使わない「自然栽培」に取り組む。政行さんはこの方法で栽培した「コシヒカリで」年間約500㍑の「どぶろく」を製造し、宿泊客に提供するほか、地元の「道の駅」や新潟市内の居酒屋に卸す。

 晴子さんが推奨するマイクロビオテックとは、穀物や野菜、海藻などを中心とする日本の伝統食をベースとした食事を取ることで、健康な暮らしを実現する考え方。

 宿の料理は、酵素玄米や調味料も自然由来のものを使う。砂糖は使わず、野菜本来のもつ甘みを引き出した料理となっている。また、みそや「三五八漬け」の素〈もと〉も自家製だ。「日本人が培ってきた、昔ながらの手作りの料理や味を大切にして伝えていきたい」と話す。

 料理などは人気が口コミで広まり、訪日客や芸能人も宿泊したことがあったという。

 宿では、晴子さん自慢の料理教室やみその仕込み、餅つきなどの体験もできる。「1日一組限定なので、マイペースでやっています。いろいろな方との出会いがあって、とても楽しいです」と声をそろえる。「料理を通じて環境問題を考えるきっかけになればうれしい。これからも農業を通じて、地域貢献できるように頑張っていきたいですね」と笑顔を見せる。

 農家民宿「おくやま」=電話、FAX0254(64)0190、ホームページhttps://www.okuyama-farm.jp

ほほえみ荘・上越市

ブランド「雪太郎大根」を手に佐藤さん
帰省したような昔懐かしい雰囲気が漂う室内

 上越市牧区棚広集落で農家民宿「ほほえみ荘」を経営する佐藤健一さん(74)。「棚広集落を離れ都会に住んでいる方が墓参りに来た時に、実家もすでに無く、すぐ帰る様子を見ているとやるせない気持ちになります。せっかく故郷に来たならば、ゆっくりできる宿があればいいのにと思っていました」と開業のきっかけを話す。

 1989年に集落内で空き家になった物件を購入し、改装工事をして93年に農家民宿を始めた。

 佐藤さんは、水稲3㌶のほかにハウスで野菜を作るほか、地元の農事組合法人「雪太郎の郷」の代表を務める。同法人では水稲8.5㌶、ソバ3㌶、ブランド化した「雪太郎大根」を1㌶栽培している。

 標高約500㍍の畑で緑肥をすき込んだ後に耕し、堆肥を入れて耕うんを繰り返して土作りを行う雪太郎大根は、寒暖差で甘くなりみずみずしく、アクもなく煮崩れしないのが特徴。提供する料理にもダイコンを使ったものが多い。また、山菜料理や法人が栽培しているソバとジネンジョで打った二八そばや、佐藤さんが飼っている鶏の卵料理も新鮮でおいしいと人気だ。

 佐藤さんは「どぶろく特区全国第1号」の製造許可を2004年に取得。製造販売し、宿泊客に提供している。「飲んで良し、食べて良し、心温まる人情あふれる里でくつろいでください」と話す。

 季節によって田植えや稲刈り、ダイコンの収穫、そば打ちなどの体験メニューも用意していて、宿泊は最大で15人までとなっている。

 「宿泊したお客さまから楽しく過ごすことができたと聞いた時はうれしいですね」と佐藤さん。「これからも続けていきたい。都会で疲れた体をリフレッシュしに訪れてほしい」と話す。

 農家民宿「ほほえみ荘」=電話025(533)6588

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