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水稲柱に園芸作物、6次化 通年収入のモデルに(2024年3月1週号)

 糸魚川市槙の「農業生産法人株式会社あぐ里能生(代表取締役・稲葉淳一さん=41歳)」では、水稲栽培のほかに育苗ハウスを有効利用して園芸作物を栽培する。また、同市特産のヨモギの栽培や自家米を使った「炭手焼せんべい」を製造・販売し、雪国でも通年で収入を得られるモデルとして注目を浴びている。

「恵まれた気候条件に加え、土作りでおいしい米ができます」と稲葉さん
一枚一枚丁寧に焼かれるせんべいは、米のおいしさをそのまま味わうことができる

 あぐ里能生は、会長の日野富保さん(77)が2007年に設立し、現在は水稲32.7㌶、ネギやサツマイモなどの野菜85.4㌃、育苗ハウスの空き期間を利用して灸〈きゅう〉に使うモグサを乾燥するほか、メロンや野沢菜を栽培している。

 代表の稲葉さんは埼玉県出身で、大学卒業後に母親の故郷の糸魚川市で同法人に就職した。「槙集落周辺は能生川沿いにある中山間地域で、権現岳から流れる豊富な雪解け水と、安定した気候に恵まれているので品質の良い米を生産できます」と話す。

 気候条件に加え「米作りは土作り」という考えのもと、もみ殻くん炭や米ぬかのすき込みなど、土作りに力を入れる。また、農薬や化学肥料を抑え、堆肥を使用した栽培方法も実践する。

 同法人では地元の企業や一般消費者、通信販売サイトなどで顧客を獲得してきた。「リピート率が高いですね。市場流通ではなく『直販』を選択し、根強い顧客層を得られたことが経営の安定につながっていると思います」と稲葉さんは分析する。

 14年からは自社栽培「コシヒカリ」を使用した「能生せんべい」の製造・販売も行っている。「せんべいを食べた方が、私たちの生産するお米に興味を持ってくださればと思い製造を始めました」ときっかけを話す稲葉さん。

 「『多角経営法人』とよくいわれますが、米作りを中心に通年で収入を得ることを考え、園芸作物や6次産業化に取り組んでいます。農地を守り、この地域で育つ農産物を広く伝えていきたいですね」と意欲的だ。

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